現金資産の重要性

 ちまたで、よく話題になる貯金投資の話です。

 最近、日本において「投資が正義貯金が悪」のような風潮があります。もちろん、日本人がその歴史的な背景から「貯金崇高主義」に陥り、世界の中でも異常に高いと言われている「資産のほとんどを貯金で保有している」現状には、ある程度課題があると思います。

 しかし、今そうした状況を利用して、「投資を煽って」いるのは証券会社や銀行、場合によってはYoutuber の思惑だと思います。また、昨今の円安をことさら強調し、ドル投資を推奨してくる様子は、その意図が明白に感じられます。

 誤解のないように言っておきますが、わたしは、「投資を否定」はしていません。どちらかと言えば、投資することを推奨しています。しかし、「誰でも投資するべき、何でもいいから投資するべき」という考えは、おかしいと思います。それぞれの状況に合ったやり方があると思います。

 さて、本題に戻りますが… ある程度、投資の経験をされた方であれば、ご存じだと思いますが、投資する際、「投資資金」とは別に「現金(貯金)」を持つことは「非常に重要」になります。人によっては、貯金のことを「現金(日本円)投資」と呼ぶくらいです。そのくらい、「貯金は、投資にとって大切なもの」であると思います。


 そこで、投資を始める際、「貯金額と投資額の比率」を考えることが重要になってきます。その後の「投資ライフの成否」を決めると言っても過言ではありません。しかし、この比率は、投資する人の年齢収入や支出、投資に対する知識量、そして何よりも「メンタル」によって決まります。

 従って、誰にでも当てはまる比率はありません。一つの目安として「貯金額=投資額」であれば、ほとんどの場合は「安全な投資」になる可能性が高いです。あくまでも目安です。

 具体的には、年齢が若く、高収入で、投資の知識があり、メンタルが強い人は、資産のほとんどを投資に回しても何の問題もないかもしれません。

 逆の言い方をすれば、高齢(一つの目安は退職後)で、収入がほとんどなく、投資初心者で、メンタルが弱い人は、「貯金額>>>投資額」が基本になると思います。ただし、「資産が100万円以下」であるような場合は、「投資自体」を再考する必要があると思います。

 

<私の現状>

 私の状況をお話しします。退職直後(3月に退職)、現金資産は退職金、家のローン(完済)などの負債なし、食べられるくらいの定期的な給与収入(再任用)があり、投資の知識はそこそこ(小額投資も含めると10年程度の経験)あり、暴落に対するメンタルは普通か強めくらいだと思います。特に、最近の相場状況で鍛えられました。なぜならば、退職金を元手に本格的な投資する直前に、下落(暴落)局面になってしまったからです。幸い、今のところは、計画変更(延期)をしながら、ゆっくりとしたペースで、慌てずに対応できています。

 さて、この後に話をすることについてですが、話を分かりやすくするために、私の投資資金は1000万円と仮定します。なぜならば、この金額を100万円にすると、実際の暴落の恐怖が伝わりません。計算がしやすいので、切りの良い金額として、この金額にしました。

それでは、空想(おとぎ)話を始めます。

 今年に入り、年度当初より、S&P500指数が約20%下落NASDAQ100指数が約30%下落しました。この指数は、株式全体の状況を表していると考えて良い数値です。ほとんどの場合は、S&P500指数で考えれば良いのですが、仮想通貨などは50%以上も下落していますので、投資した商品により適した指数を参考にすると、話が現実的になると思います。

 それでは、始めます。

 年初から3月にかけて(1回目)、4月から6月にかけて(2回目)の下げを経て暴落したS&P500は、8月現在半分程度回復しました。つまり、年度当初からは、10%の下落になりました。わたし個人的な考えとしては、今後来年末までのどこかで、S&P500は、2022年年初と比較して、最大50%程度下落する可能性があると考えています(個人の意見です)。それを前提の話になります。
<たとえ話>

 今回、以下のような設定をします。私は1000万円の資産があります。それを、現金で700万円保有して、300万円を投資資金に充てたとします。投資商品は、S&P500のインデックス投資信託とします。ここで仮に、S&P50030%暴落したとします。


 この場合、私は90万円(300万円×30%)を失うことになります。

 投資資金300万円は、210万円になってしまいます。資産を増やそうと考えて投資した300万円は、210万円にまで減ってしまいます。これは、かなり現実的な数値です

 もし、私が全資産1000万円を投資していたならば、投資した1000万円300万円を失い700万円になってしまいます。しかも、その後に打つ手は何もない状況になります。


 さて、これからが、わたしが一番伝えたいことです。

 「私の投資資金300万円は、今回の暴落で、210万円になってしまった」

 でも、こう考えてみてください!

 「私の資産1000万円は、今回の30%もの暴落でも、910万円にしか減らなかった」

 これが、現金資産を持つことの、最大のメリットです
<暴落後の対応例> 以下の方法を、「投資初心者」には、絶対におすすめしません!


 現金資産を持つメリットは、暴落時の精神的なショックを和らげるだけではありません。
 暴落の底で、残された現金資産の一部を一括投資をして、最大効率で利益を取りにいく方法が使えます


 実は、今年の6月(今回の暴落の底のとき)、様々なシグナルが暴落の底を示していました。その時に使える方法です。ほとんどの場合、暴落直後に一括投資ができるメンタルが強い人はいません。しかし、最初から、暴落を狙って投資を考えている人もいます。


 先ほどの30%下落を例にして、具体的な説明をします。

 今回の暴落の底で、700万円の現金の一部(いくらでもいいのですが)を、(仮に)現在の投資額と同じ300万円を一括投資したとします。この場合、投資総額は600万円現金は400万円になります。

 仮に、相場が元の水準に戻ったとき90万円(追加投資の300万円×30%)の利益が出ます。追加投資がなければ、元に戻っただけなのでプラマイゼロです。

 更に、そこから相場が20%上昇した場合は、更に120万円(総投資額600万円×20%)の利益が出て、利益の総額は210万円(90+120万円)になります。もし、6月で追加投資をしなかった場合は、利益は60万円(300万円×20%)になります。60万円でも素晴らしい利益です。従って、追加投資をする必要はありません。なにしろ、300万円が360万円になったのですから!


 アドバイスです。

 今回の暴落を利用した追加投資により、1000万円の総資産は1210万円になりました。現金が400万円投資資金が810万円になります。この810万円の投資資金は、当初の割合に比べて高すぎます。賢い方法としては、現金と投資資金の比率を、当初の7:3に戻すのが好ましいです。

 7:3に戻した場合、現金が850万円投資資金が360万円になります。こうすることで、次の暴落に備えることができます。これが俗に言う、リバランスの考え方です。
<上級者編>

 実は、更なる暴落を、待っている人たち(私もそうですが)がいます。

 株式暴落の底を言い当てるのは、投資の専業プロでも難しいと言われています。実際、リーマンショック3段下げのときは、3回目の下落幅が一番大きく、1番目の底、2番目の底で、先ほどのような追加投資した人は、ことごとく投資の世界から消えたと言われています。

 ただし、1回目や2回目の暴落のとき、この後に大きな下げがくるかもしれないと考えて、全力で投資せず余力を残して投資した人たちは、巨大な富を手に入れています。それだけに、現金資産を持つ持ち続ける)ことは、多段の暴落対策として非常に有効な手段になります。


 今回の下落局面で、相場は半分以上回復しました。一般的にまたは統計的に、半分以上回復した場合、相場は元の水準まで戻る可能性が高いと言われています。なので、投資を再開させている人も一定数います。

 なぜなら、投資をしないで眺めていると、折角の暴落のチャンスをのがしてしまう可能性があるからです。皆さん、それがもったいなくて、投資せずにはいられません
 最後に、わたしの考えを述べます

 その後、8月から10月にかけて3回目の下げがきて最安値を更新しました。その後は1回目、2回目同様、大きく回復しています。

 さて、わたしは、今回の下げでも、追加投資をしていません。それは自分なりに考えて、更なる下げがくると思っているからです。でも、もしかしたら、クリスマスラリーと称して、このまま上昇を続けるかもしれません。でも、どちらでも良いのです。

 わたしにとって、このまま上がり続けることも、下げがくることも両方とも楽しみだからです。

① 4回目の下げがきた場合

 このシナリオを高い確率で予想しています。この場合は、先に述べたように、この日のために準備していた現金を使って追加投資します。また、下落幅の大きさ(年初より50%下げ)によっては、投機性の高いレバレッジ商品も織り交ぜて、投資額を大きくして対応する予定です。ただし、いかなる場合でも全力では投資しません。

② 5回目の下げがきた場合

 このシナリオは、時間をおいて2023年後半から2024年前半くらいを考えています。当然準備はします。4回目の下げのときに投資した金額と同程度か、少なめの金額で一括投資します。流石に、6回目の下げのことは考えません。なぜならば、既に十分に暴落しているので、その後に多少値を下げても、戻してくれば利益を取れることになるからです。

③ 3回目の下げの後、このまま相場が回復してしまった場合現実はこのシナリオになりました

 今回言いたかったことの2つ目がこちらです

 わたしは、相場が回復することも、とても楽しみにしています。毎日毎日、資産が増えるのを眺めるのは楽しいからです(笑)。理由は、値を戻すことで、利益を得ることができるからです

 それは、定期定額積立が理由です。

 詳しいことは、別のトピック(複利効果と、長期の定期定額積立)でお話ししますので割愛しますが、簡単に言うと、定期定額積立は、一度相場が下がり元の価格に戻ったときに、利益を上げることができる手法です。この方法は、暴落の下げ幅が大きければ大きいほど、暴落の期間が長ければ長いほど、大きな利益を得ることができます

 わたしは、かなり大きな額の定期定額積立を行っています。従って、長い目で見たときに、今回の下落(暴落)は非常に好ましいものなのです。
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